突然、耳が聞こえづらくなった高校生のケース【症例検討】
15歳・高校1年生の女の子。
ストレッチ中に息を止めた際、首に強い衝撃が走り、めまいと共に耳が聞こえづらくなってしまったそうです。
遠方の有名な専門医で検査を受けたところ、片側の聴力全体が落ち、特に4000Hzの音がほとんど聞こえないとの診断。
医師からは「これは元に戻らない」と告げられ、ステロイド薬を処方されました。
その後、他院での鍼灸も含め、様々なアプローチにも通ったものの、なかなか変化が見られなかったとのこと。
片耳は聞こえますし、一見すると生活に大きな支障があるわけではないかもしれません。
ですが、これまで当たり前に聴こえていた音が突然聴こえなくなるというのは、本当に苦しくて、言葉にできないほどつらいものです。
ただ、彼女は留学するほど「感覚的な身体表現活動」をされているため、その小さな身体の揺らぎが、平衡感覚や音からの動きといった、彼女の未来の大きなパフォーマンスに繋がってしまうかもしれない。そんな不安な状況の中にありました。
当サロンとの温かいご縁
実は、彼女は小学生の時に当サロンでロルフィング®を受けてくれていた大切なご縁があり、今回のことをきっかけに思い出して連絡をいただいたのです。
その際、まずお母様とご本人にお伝えしたのは、
「当サロンは特定の症状を治すための医療機関(治療を行う場)ではなく、あくまで身体全体のバランスをニュートラルに整え、自然な健やかさをサポートする場所です」ということでした。
丁寧な身体チェックでみえてきたサイン
お腹、脈、ツボ、そしてキネシオロジーなどから丁寧に身体の状態を確認していくと、以下のような多くのサインが隠されていました。
- 滞り(お血)の反応
- 自律神経の大きな乱れ
- エネルギー(気)が上方にのぼりすぎている状態
- 繊細な身体のストレス反応
- 深い疲労と、それによる免疫力の低下
- リンパの腫れや水分代謝の滞り
- 首まわりの強い緊張(コリ)
- 姿勢全体のアンバランス
- 内熱(軽い熱中症のように熱がこもった状態)
このように、多方面にわたる「身体のシステム全体の乱れ」が見られました。
これらは病院の精密検査では「異常なし」とされてしまう部分ですが、身体は確かに悲鳴を上げ、サインを出してくれていたのです。
また、お腹の硬さから拝見すると、処方されていた強いお薬がお腹にとって少なからず負担になっていたのかもしれません。
実際に尋ねたところ、「お腹を壊してしまい、お薬をお休みして胃腸のケアをされている状態」でした。
セッションのプロセス(共同作業の流れ)
まずは、現在の姿勢や動きのクセを一緒に確認し、特定の部位に特別意図をせず、ロルフィング®の優しいタッチで全身のつながりを緩めていきました。
これを行うだけでも、身体のシステム全体にゆとりと変化が生まれてきます。
しかし、それだけでは手放せない深い滞りもありましたので、身体の微細な反応を丁寧に拾いながら、以下のようなホリスティックなアプローチを重ねていきました。
・全体の滞りを整えるケア
・自律神経の調和処置
・内側の健やかさを引き出すアプローチ
・口腔内への繊細なワーク(顎や頭蓋の解放)
・微細なエネルギーワーク
・リンパの巡りの調整
・フラワーエッセンス(レメディ)の選定
・お腹に優しい食事のアドバイス
過去にロルフィング®の経験があったため、彼女の細胞は身体の緩め方をよく覚えており、変化はとても早く現れました。
数回のセッションで全体のシステムが落ち着いたのを見届けてから、はじめて耳の周辺、そしてつながりの深い「肘や腕」のラインへ優しく働きかけるアプローチを行いました。
すると、耳の奥に心地よい響きを感じたとのこと。
当サロンの最初のお立ち会いでは、4000Hzの音叉(おんさ)の音が全く聞こえない状態でしたが、セッションを丁寧に重ねていくうちに、「耳の奥に振動を感じる」「音が優しく聞こえるかもしれない」と身体が素晴らしい反応を示し始めてくれたのです。
純音聴力検査(オージオグラム)の驚くべき変化
その後、病院で行われた再検査の結果です。こちらが実際の「純音聴力検査(オージオグラム)」のデータです。

検査グラフの見方はとてもシンプルです。
グラフの線が下に落ちているほど「聞こえにくい状態」を示し、上にあるほど(0に近いほど)「よく聞こえている正常な状態」を示します。
6月の病院での検査段階では、全体的な聴こえのラインが下がり、特に高い音(4000Hz付近)が完全に落ち込んでしまっていました。
ところが、当サロンでのセッションを経た8月の再検査では、グラフの線が一気に上へと戻り、ほぼ正常な聞こえの数値へと美しく回復していたのです。
初めて当サロンに来られたのが7月でしたので、期間にしてわずか1ヶ月ほどのこと。
専門医の先生も驚くほどの素晴らしい回復ぶりに、ご本人もお母様も、心から安心され、本当に喜んでくださいました。
ご本人からも温かい感謝の言葉をいただきましたが、これは私が何かを一方的に“治した”のではありません。
身体の可能性を信じて、ご本人とご家族が一緒になって真摯に向き合ってくださった「共同作業」の結果だと思っています。
ホリストティックな視点からの大切な気づき
一見すると突然起こるアクシデントのような症状も、実は深層心理や身体の防衛反応としての「大切な意味」を持っていることがあります。
「日常の情報が多すぎて処理しきれなくなっているから、お耳からの情報をあえて一時的に減らす。そうして心も身体も完全に休めないと、生命全体の維持に関わってしまうよ」という、内なる知恵からの強制停止のサインであるケースが多いのです。
東洋医学でいう「腎虚(じんきょ)」の現れでもありますが、彼女の場合はそれだけにとどまらず、複雑な要因が重なり合っていました。
外傷的な要因を除けば、多くは過度なハードワークや限界を超えた疲労の蓄積によって引き起こされると言われています。
つまり、「耳のトラブルは、耳だけの問題ではない」ということです。
これは、突然動けなくなるギックリ腰なども同様です。
身体にこれ以上負担をかけないよう、痛みによって強制的に休息を取らせてくれているのです。
そう考えたとき、
「強い注射で痛みを一時的に消し去る」
「強い力で骨格をバキッと矯正する」
「薬で無理やり痛みを止める」といった対処が、身体の本質的な声を無視することになっていないか、一度立ち止まって考えてみることはとても大切です。
身体から外へ出そうとしているサインを受け止め、冷えているのであれば優しく温めてあげるような、自然の摂理に沿ったケアが求められます。
この高校生の背景にあったもの
彼女の生活背景を紐解くと、少し前まで海外に留学をされており、慣れない環境の変化の中に身を置いていました。
さらに帰国後も、毎日をとても忙しく駆け抜けていたそうです。
海外での乾燥した気候、食事の違い、無意識のうちに受けていたストレス、そして深い疲労の蓄積。そこに日本の厳しい暑さが重なった結果、身体の許容量を超えてサインとして溢れ出たのが今回のケースでした。
ですから、引き金となったのは「息を止めたストレッチ」だったとしても、その背景には何層もの原因や環境の重なりがあったのです。
それを、私からの丁寧な対話やアプローチを通じて、ご本人がご自身の身体としっかり向き合い、気づいた感覚を素直に共有してくれたからこそ、背景への理解が深まり、身体に最も響く適切なサポートができました。
セッションとは、「共同作業」です。
「大丈夫です、特に何も……」とご自身の内側を閉ざしてしまうのではなく、小さな感覚に意識を向け、対話していくことで、身体の可能性はどこまでも開かれていきます。
また、このようなデリケートなトラブルは、時間が経過してしまうと本来のバランスを取り戻すことが難しくなるケースが多いのも事実です。
今回の素晴らしい結果は、身体の異変に対して「今できる最善のことをすぐに行動に移そう」と、素早く動き、温かく寄り添い続けられたお母様の深い愛と熱心なサポートがあったからこそ、手繰り寄せられた未来なのだと感じております。
身体の声に、共に耳を傾けるということ
最後になりますが、当サロンは病気そのものを治療する場所ではありません。
ロルフィング®をはじめとする統合セッション(鍼灸、エネルギーワーク)は本来、外側から犯人探しをするように原因や問題を追及し、身体を責め立てるようなことはいたしません。
ただ淡々と、静かに身体のつながりに触れ、全体の調和を促していきます。
言葉にして話したくないことは、無理に話さなくても全く問題ありません(言葉で話すことと、ご自身の身体感覚と向き合うことは別次元のものです)。
今回の彼女の場合は、過去に10回以上の基礎的なロルフィング®のプロセスを終えられており、ベースとなる信頼関係や身体の土台がしっかりと構築されていました。
そのため、今回は統合セッションを柔軟に組み合わせ、身体の奥底にある本当の原因、理由、そしてメッセージに、共に深く耳を傾けるアプローチを行うことができました。
身体が発している無言の声に耳を澄まし、一緒に健やかな未来へと歩んでいくことは、いつからでも可能です。
こちらは非常に繊細で特殊なケースではありますが、もし「病院では良くならないと言われたけれど、諦めずに自分の身体の可能性と向き合ってみたい」と思われたなら、私はできる限りのサポートをさせていただきます。
今この瞬間の小さな行動が、あなたの数ヶ月後、数年後の未来を優しく変える大きな一歩になるかもしれません。


コメント